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最高裁判所第二小法廷 昭和57年(オ)426号 判決 1985年11月15日

上告人 株式会社フラワー商会破産管財人 八代紀彦

被上告人 国

代理人 菊池信男 並木茂 富田善範 竹野清一 大田黒昔生 井口博 柳原孟 ほか二名

主文

原判決を破棄する。

被上告人の控訴を棄却する。

控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

理由

上告代理人佐伯照道、同西垣立也、同辰野久夫の上告理由について

法人を保険金受取人とする簡易生命保険契約において、法人が破産宣告を受けて解散した場合には、簡易生命保険法三九条の規定に基づく還付金請求権は破産財団に属するものと解するのが相当である。けだし、同法五〇条が還付金を受け取るべき権利は差し押さえることができないものとした趣旨は、これを保険金受取人の債権者の一般担保としないことによつて、保険金受取人の最低生活を保障することにあると解されるところ、保険金受取人が破産宣告を受けた場合においては、それが自然人であるときには、その最低生活を保障するために破産法六条三項を適用して還付金請求権を自由財産として残すことが要請されるのに対し、保険金受取人が法人であり、破産宣告を受けて解散したときには、還付金請求権を破産財団から除外して破産法人の自由な管理処分に委ねるべき合理的根拠はもはや存在しないものといわざるをえないから、同規定は適用されないというべきである。

これを本件についてみるに、原審が適法に確定した事実関係によれば、(一) 株式会社フラワー商会(以下「破産会社」という。)は、昭和四四年六月、郵政省簡易保険局長との間で、(1) 保険の種類一〇年払込一五年満期養老保険、(2) 保険金額一五〇万円、(3) 被保険者伊集院司、(4) 保険金受取人破産会社、(5) 保険契約の効力発生の日昭和四四年六月二一日とする簡易生命保険契約を締結した、(二) 右契約は、破産会社が被上告人に対して昭和五三年六月分の保険料を支払わなかつたため、同年九月二〇日に失効した、(三) その結果、破産会社は、被上告人に対し、還付金一一二万五〇〇〇円及び剰余金二二万六八〇〇円の合計一三五万一八〇〇円から未払保険料三万二四〇〇円を控除した残額一三一万九四〇〇円(以下「本件還付金等」という。)を受け取るべき権利を取得した、(四) 破産会社は、昭和五三年八月一七日大阪地方裁判所において破産宣告を受け、同日上告人がその破産管財人に選任された、(五) そこで、上告人は、昭和五四年一〇月二六日、被上告人に対し、本件還付金等の支払を求めた、というのである。

しかるところ、原審は、上告人の本件還付金等の支払を求める本訴請求につき、簡易生命保険法五〇条の規定が自然人と法人とを区別していないこと及び法人が簡易生命保険に加入することは同法一条の趣旨に合致することを理由に、本件還付金等を受け取るべき権利は差し押さえることができず、したがつて、右権利は破産会社の破産財団には属しないものというべきであるとし、上告人の本訴請求を棄却している。

しかしながら、上告人の本訴請求のうち還付金の支払を求める部分については、前記の説示に照らし、右還付金請求権が破産会社の破産財団に属することは明らかであるから、これが破産会社の破産財団に属しないとした原審の判断には法令の解釈適用を誤つた違法があるものというべきであり、また、上告人の本訴請求のうち剰余金の支払を求める部分については、簡易生命保険法五〇条の規定の適用のないことは、同法四九条の規定との対比上明らかであるから、原審が右請求を棄却したのは明らかに同法五〇条、破産法六条三項の規定の解釈適用を誤つた違法があるものというべきであつて、以上の違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、原審の確定した前記事実関係によれば、上告人の本訴請求は正当として認容すべきものであるから、これと同旨の第一審判決は正当であり、被上告人の控訴は理由がないものとして、これを棄却すべきである。

よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官島谷六郎の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官島谷六郎の反対意見は、次のとおりである。

私は、保険金受取人である法人が破産宣告を受けて解散した場合は、還付金請求権をなお破産法人に留保してその自由な管理処分に委ねるべき合理的根拠を欠くから、破産法六条三項の規定は適用されない、とする多数意見にはにわかに賛同することができない。

もとより、簡易生命保険の保険契約者であり保険金受取人でもある法人が破産した場合に、還付金請求権を破産財団に属せしめず、自由財産として法人に留保しておくことが不合理であることについては、私も多数意見と見解を同じくするものである。しかし、それだからといつて、破産法六条三項、簡易生命保険法五〇条の規定が存するにもかかわらず、還付金請求権が破産財団に属するものと解することは許されないものと思料する。

そもそも簡易生命保険は、国民に、簡易に利用できる生命保険を、確実な経営によつて、なるべく安い保険料で提供し、もつて国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的としている(簡易生命保険法一条)のであるが、その沿革をたどれば、大正五年の旧簡易生命保険法によつて発足した制度である。当時、保険金額の比較的高額であつた民営保険に加入できない低所得者層を対象とした、保険金額の小さい保険(当時、小口保険は事業費が割高となるため民営に適しないものとされた。)を発足させた社会政策立法であり、国の独占事業として創設されたものであるが、戦後は、国の独占事業ではなくなり、民営保険でも広く小口保険が行われることになつた。しかも、簡易生命保険においても、保険契約者が法人組織の企業である場合が増加してきており、本来低所得者層のための制度として発足したものでありながら、今日においては民営保険と変るところのない事業となつているのである。ところが、民営の生命保険においては、保険金又は還付金を受け取るべき権利について、その差し押さえを禁止する法の規定がないのに、簡易生命保険においてのみこれが存するのであつて、全く同じ事業を行いながら、この点については両者間に大きな差異が生じている。法人が保険契約者である場合についてまで、保険金又は還付金を受け取るべき権利を差押禁止としなければならないかどうかは問題であり、ことに、保険金受取人である法人が破産宣告を受けて解散した場合にまで破産財団に属しない自由財産として残すことは、不合理といわなければならないのであつて、簡易生命保険法五〇条の規定は、再検討されて然るべきであると考えられる。

しかし、現行法は、破産法六条三項本文が差し押さえることのできない財産は破産財団に属しないとの原則を定め、また、簡易生命保険法五〇条が保険金受取人の還付金請求権を差し押さえることのできないものとしている。したがつて、右の還付金請求権は破産財団に属しないものと解すべきである。破産法六条三項但書は、差し押さえることのできない財産であつても、破産宣告があつた場合には破産財団に属することとなる例外的な財産を掲げているが、右の還付金請求権はこれに含まれておらず、簡易生命保険法も右の権利についてそのような特則を設けていない。例外を定めた破産法六条三項但書の規定は厳格に解釈すべきものであり、また、これに掲げられている財産と対比検討しても、右の権利に同項但書を類推適用することは相当でない。したがつて、破産宣告を受けた法人が保険金受取人として有する還付金請求権を破産財団に属しない自由財産とすることが不合理であるからといつて、多数意見のいうように解釈することは許されないところである。

よつて、私は、原判決中還付金の請求に関する部分については、原審の判断を維持すべきものと考える。

(裁判官 島谷六郎 木下忠良 大橋進 牧圭次 藤島昭)

上告理由

原判決には、判決に影響をおよぼすことが明らかな破産法六条三項本文の解釈・適用の誤りがある。

一 原判決の判旨は、必ずしも分明でない部分もあるが、要するに、

(1) 簡易生命保険法五〇条および破産法六条三項本文は、自然人と法人とをなんら区別しておらず、自然人と法人とを区別して解釈することは困難であり、

(2) 簡易生命保険制度を利用する法人の多くは零細な小規模企業で、その加入目的からみて法人が簡易生命保険に加入することは簡易生命保険法一条の趣旨に合致し、同法五〇条をその明文の規定どおり法人が権利者である場合にも適用あるものと解することには、合理的な根拠があり、

(3) 還付金等支払請求権は差押えることができない財産であるから、破産会社の破産財団には属しないと解するのが相当である、

というのである。

しかしながら、破産法六条三項本文は、破産者が法人である場合には適用がなく、簡易生命保険法五〇条によつて差押えが禁止されている還付金等請求権も破産法人の破産財団に属すると解すべきであり、原判決の右見解は誤りである。その理由は次のとおりである。

二 民事執行法(上告人による還付金請求時の民事訴訟法強制執行編)および各種の特別法においては、債務者に属する財産のうち一定範囲のものについて、その差押えを禁止または制限しており、その理由とするところは一律ではないが、主として債務者の最低生活を保障することを目的とするものである。簡易生命保険法においても、その五〇条において、「保険金又は還付金を受け取るべき権利は、差押えることができない。」と定めているが、この規定も、同法一条に示されている同法の立法趣旨から明らかなように、主として右と同趣旨の社会政策的見地から設けられたものと解することができる。このような債務者の最低生活を保障するために設けられた各種差押禁止規定の趣旨は、包括執行たる破産の場合にも尊重されるべきであり、これを受けて破産法六条三項本文は、「差押フルコトヲ得サル財産ハ破産財団ニ属セス」と定め、差押えが禁止されている財産については、破産者の最低生活の手段まで奪わないとの趣旨で、これを破産財団に取り込むことなく、破産者の自由な管理処分に委ねることとしているのである。破産法六条三項本文の法意が右のとおりであるとすれば、自然人が破産者である個人破産の場合に右規定がそのまま適用されることはいうまでもないが、法人が破産者の場合においては、個人破産の場合と同一に考えることは妥当でない。

法人にあつては、破産は一般に解散原因とされ(民法六八条一項三号等)、株式会社についても破産によつて当然に解散したことになり(商法四〇四条一号、九四条五号)、解散による清算手続は破産手続により行われるのであるが、破産法人の法人格(権利能力)は、法人がもともと目的的な存在であることから、破産的清算の範囲内に制限されることになり(破産法四条)、破産管財人の管理処分下に置かれる財産関係を除いた組織法的(人格的)な存在を認めうるにすぎない。そして、破産法人については、その存在目的・性格からして、差押えが禁止されている財産を破産財団から分離して、破産者の自由な管理処分に委ねるという最低生活の保障のための社会政策的考慮を必要としないのである。

商法四一七条は清算人の決定に関する規定であるが、合併の場合には清算の必要がなく、また破産の場合も、同時破産廃止の決定がなされる場合を除き、破産管財人が選任され、破産管財人が一切の財産について破産手続を遂行するものであつて、自然人の場合のように破産財団を構成しない自由財産なるものが存しないところから、結局合併および通常の破産の場合にはいずれも清算の必要がなく、したがつて清算人設置の必要がないために、同条一項は、会社が解散したときは、(取締役以外の者を清算人として定款で定めまたは株主総会で選任した場合を除き)解散前の会社の取締役が清算人となるとしながら、「合併及破産ノ場合ヲ除クノ外」と規定しているのである。

右に述べたところをあわせ考えると、破産者が法人であるときは、自然人の場合の差押禁止物を含めて一切の財産をもつて破産財団が構成されるのであり、破産法六条三項の規定は適用されないものと解するのが相当である。(以上、第一審判決より引用。)

このように、法人破産の場合には、「自由財産なる観念を入れる余地がな」(谷口安平・倒産処理法一三一頁)く、破産法六条三項本文の適用がないと解すべきである。

三 原判決は、法人破産の場合にも破産法六条三項本文の適用があると解すべき理由の一つとして、前記(1)のとおり、簡易生命保険法五〇条および破産法六条三項本文は自然人と法人とをなんら区別していないこと、をあげている。

なるほど、簡易生命保険法五〇条は「保険金又は還付金を受け取るべき権利は、差し押えることができない。」と規定し、破産法六条三項本文は「差押フルコトヲ得サル財産ハ破産財団ニ属セス」と規定しており、文言上は自然人と法人とを区別した表現とはなつていない。

しかしながら、規定の文言上は表現されていなくても、その規定の立法趣旨からみてその文言どおりとすると結論の妥当性に疑問がある場合に、解釈によつて文言を制限的に解して適用することはよく行われるところであつて、むしろ法律解釈の主要な部分を占めているといつてよい。そのような例は枚挙に暇がないが、民法一七七条の「第三者」について、明治四一年一二月二五日の大審院民事聯合部判決(民録一四輯一二七六頁)が、同条には単に「第三者」と書かれこれを制限する字句がないことを理由とする無制限説に立つ従来の判例(大判明治四〇年二月二七日民録一三輯一八八頁、同明治四〇年一二月六日民録一三輯一一七四頁、同明治四一年四月六日民録一四輯三九五頁など)を改めて、同条にいう「第三者」とは、不動産物権の変動につき「登記欠缺ヲ主張スル正当ノ利益ヲ有スル者」に限るとした例に、その典型をみることができる。

また、改正によつて削除される前の民事訴訟法五七〇条一項五号の「医師」に法人が含まれるかの点について、大審院昭和五年四月一六日決定(民集九巻三九二頁)は、「按スルニ民事訴訟法第五百七十条第一項第五号ニ於テ医師其ノ他同号所掲ノ者ニ就キ其ノ職業ヲ執行スル為メ缺クヘカラサル物竝身分相当ノ衣服ハ之ヲ差押フルコトヲ得サル旨規定セルハ是等ノ職業ヲ執ル者ニ付テハ假令強制執行ヲ受クルモ生活資料ヲ得ル途ヲ吐絶セシメス職業ヲ継続セシムルヲ以テ社会政策上当ヲ得タルモノト認メタルニ由ルモノトス従テココニ医師トハ現ニ診療ニ従事シ生計ヲ営ム自然人ヲ専ラ指称シ医師ヲ招聘シテ患者ヲ治療スルコトヲ目的トシテ設立セル法人自体ノ如キハ右規定ニ所謂医師ニ該当セサルハ勿論前記立法ノ趣旨ニ鑑ミテ之ニ対シ右規定ヲ類推適用スヘキモノニ非スト解スヘキナリ」と述べて、自然人に限るとしている。

さらに、最高裁判所昭和四六年一〇月二一日第一小法廷判決(最高裁判所判例解説・民事篇・昭和四六年度二五七頁以下)は、民法三一〇条の「債務者」に法人が含まれるかの点について、「思うに、民法三〇六条四号、三一〇条の法意は、同条の飲食品および薪炭油の供給者に対し一般先取特権を与えることによつて、多くの債務を負つている者あるいは資力の乏しい者に日常生活上必要不可欠な飲食品および薪炭油の入手を可能ならしめ、もつてその生活を保護しようとすることにあると解される。かかる法意ならびに同法三一〇条の文言に照らせば、同条の債務者は、自然人に限られ、法人は右債務者に含まれないと解するのが相当である。」と述べて、自然人に限るとしている。

右にあげたような例からも明らかなとおり、原判決のいうように規定の文言上自然人と法人とが区別されていないということは、破産法六条三項本文を法人破産の場合には適用がないと解するにあたつて、何ら妨げとなるものではない。とくに、後二者の判例は、法人破産の場合には破産法六条三項本文の適用がないと解すべきことを示唆しているということができる。

四 次に、原判決は、前記(2)のとおり、簡易生命保険法五〇条をその明文の規定どおり法人が権利者である場合にも適用あるものと解することには合理的な根拠があるという。

本件で問題となつているのは破産法六条三項本文の解釈であつて、原判決が述べるところがこれといかなる関係があるのか必ずしも明らかではない。しかし、その点は措くとしても、原判決が述べるところは、次に述べるとおり、疑問なしとしない。

簡易生命保険法第一条によれば、簡易生命保険制度の目的は、「国民生活の安定を図り、その福祉を増進すること」にある。生活および福祉という概念は、自然人についてのみ考えられるところから、右の「国民」は自然人をさし、法人は含まないものと解すべきであろう。他方、原判決は、簡易生命保険制度を利用する法人には零細な小規模企業が多く、加入の目的は、<1>「役員に万一の場合があつたときの事業の安定のため」、<2>「役員に万一の場合があつたときの見舞金、弔慰金及び役員退職金の確保のため」、<3>「従業員に万一の場合があつたときの見舞金、弔慰金及び従業員の退職金の確保のため」とするものが多い、と判示している。本件で問題とされているのは、還付金等請求権が、右の役員・従業員に帰属している場合ではなく、法人に帰属している場合であることはいうまでもない。右の加入目的のうち<2>および<3>は、法人に還付金等が支払われる結果、法人の資力が増し、万一の目にあつた役員・従業員に見舞金等を支払うことができるようになり、(制度上の保障はないけれども)実際に支払がなされれば、間接的・結果的にではあるが、「国民生活の安定を図り、その福祉を増進する」という簡易生命保険制度の目的に副うことになるかも知れない。しかし、右の加入目的のうち<1>については、これは明らかに事業資金の増加が目的とされており、前記の簡易生命保険制度の目的に副うということはできない。

こうみてくれば、原判決のいうように、右の<1><2><3>のような目的で法人が簡易生命保険に加入することが簡易生命保険法一条の趣旨に合致するものと考えることには疑問があり、ひいては、同法五〇条を法人が権利者である場合にも適用すべきか否か疑問なしとしない。

仮に原判決のいうように、簡易生命保険法五〇条を法人が権利者である場合にも適用あるものと解すべきであるとしても、このことは、破産法六条三項本文の解釈にあたつて、法人破産の場合にはその適用がないと解することと矛盾するものではない。

五 さらに、原判決は、「保険金受取人である法人が破産によつて解散した場合には、還付金等を受け取るべき権利は、商法四一七条二項の規定に基づき利害関係人の請求により裁判所が選任した清算人においてこれを行使すべきであり、清算人は、簡易生命保険法五〇条が右権利を差押禁止物とし破産財団には属せしめなかつた趣旨にそつて、これを用いるべきものと解される。」という。

原判決の右判示は抽象的なため、還付金等を受け取つた清算人が、具体的に、これを誰にどういう名目の下に支払えばよいのか必ずしも明らかでない。原判決は、あるいは、万一の目にあつた役員・従業員に対して見舞金等として支払うことを想定しているのかも知れない。しかしながら、清算人がそのような支払をなすことができるという法律上の根拠は容易に見い出しがたい。とくに、本件の場合は、保険事故が発生したのではなく、破産会社が保険料を払い込まなかつたため保険契約が失効し、その結果、破産会社が被上告人に対して還付金等の支払請求権を取得することになつたというのであるから、万一の目にあつた役員・従業員は、そもそも存在しないのである。

還付金等の請求権が破産財団に属しないとすれば、破産会社にとつては、還付金等は残余財産であると考えるべきものと思われる。そうとすれば、清算人は、商法四二五条によつて、還付金等を株主に分配すべきことになる。他方で、十分な配当を受け得ない破産債権者が存在するにもかかわらず、株主が分配金を受領するというような結論が妥当でないことはいうまでもない。

以上の次第により、原判決は、破産法六条三項本文の解釈・適用を誤り、その結果が判決に影響をおよぼすことが明らかであるから、破棄を免れないと信ずる。

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